― 大学別データ判定 ―
埼玉医科大学は“やばい”のか。Fランと言われる理由をデータで検証
河合塾偏差値・私学版大学ポートレート・大学公式の就職データで、噂ではなく数字から解剖する埼玉医科大学(埼玉県)の実像

この記事の目次
河合塾の偏差値で見る埼玉医科大学(学部別)
最初に、判定の物差しをはっきりさせます。私がこのサイトで使う基準は二つです。河合塾が難易度(ボーダー偏差値)を算出できない最下層をS:BF(真性Fラン)、河合塾が偏差値を出していても35前後で受ければほぼ通る水準をA:実質全入(純Fラン帯)と呼びます。埼玉医科大学はこの物差しで見ると、一つの大学の中に両極端が同居している珍しいケースです。
| 学部 | 学科 | 河合塾偏差値 |
|---|---|---|
| 医学部 | 医学科 | 62.5 |
| 保健医療学部 | 看護学科 | 35.0 |
| 保健医療学部 | 臨床検査学科 | 35.0 |
| 保健医療学部 | 臨床工学科 | 35.0 |
| 保健医療学部 | 理学療法学科 | 35.0 |
表の通り、医学部医学科は62.5。これは一般的な大学の基準ではむしろ難関の部類で、Fランという言葉は当てはまりません。医学部は入試方式そのものが厳しく、そもそも河合塾が難易度を出せないS:BFとは正反対の位置にあります。一方、保健医療学部の4学科(看護・臨床検査・臨床工学・理学療法)はいずれも35.0。当サイトの基準ではA:実質全入に該当します。つまり「埼玉医科 Fラン」という検索が想定している偏差値帯は、多くの場合この保健医療学部側です。
ここで結論を急がないでください。偏差値35は入りやすさの指標であって、就職の弱さや教育の質を直接意味するものではありません。医療系の資格取得を目的とする学部では、入口の偏差値よりも、出口の国家試験合格率と就職先のほうが実利に直結します。だからこそ埼玉医科大学は、偏差値だけを見て判定すると実像を取り違えやすい大学です。次章では、その出口の堅さと入口の緩さを同時に映し出す一次データを扱います。出典は河合塾Kei-Net大学検索システム(2027年度用)。
ここが本題:収容定員充足率86.6%という二面性
偏差値の話は他のサイトでも読めます。この記事の独自の軸は、日本私立学校振興・共済事業団が運営する私学版大学ポートレートに埼玉医科大学が公表している収容定員充足率です。その数値は86.6%(2025年時点)。これは在籍者数が定員に対してどれだけ埋まっているかを示す一次データで、偏差値とは別の角度から大学の実態を映します。
86.6%という数字を素直に読むと、定員100に対して在籍が約87、つまり定員を完全には満たし切れていない状態です。ここに、埼玉医科大学の二面性があります。
- 入口の面。保健医療学部は偏差値35帯で、当サイト基準ではA:実質全入に近い間口です。にもかかわらず充足率は100%に届いていません。誰でも受かるに近い水準まで門戸を広げても定員を埋め切れていない、という事実は、人気という意味でのブランド力が限定的であることを裏づけます。「埼玉医科 Fラン」と検索する人が感じ取っている入りやすさは、この充足率にも表れています。
- 出口の面。その一方で、後の章で見る通り、卒業後はグループ3病院への就職がほぼ保証され、直近の学科別就職率は各学科100%(大学発表)です。国家試験合格率も新卒でおおむね全国平均並みかそれ以上。入るのは易しくても、出るときの実績は堅い。
だから「埼玉医科大学はFランか」という一問一答は、そもそも設計が雑なのです。正確に言えば、入口偏差値はFラン帯・出口実績は堅実、という非対称がこの大学の正体です。収容定員充足率86.6%は、その非対称の入口側を数字で裏づける、当サイトだけが軸に据えている一次データです。他サイトが偏差値の低さで話を止めるのに対し、私はこの充足率を出発点にして、次章以降で出口の堅さまで通しで検証します。出典は私学版大学ポートレート(日本私立学校振興・共済事業団、2025年)。
「やばい・恥ずかしい」という噂の検証
埼玉医科大学を調べると、やばい、恥ずかしい、といった刺激的な語がサジェストに並びます。私はこの手の噂を逐語で並べ立てるつもりはありません。個人を特定するような書き込みや事実確認できない断定を再掲することには意味がないからです。ここでは噂を3つの類型に整理し、事実に照らして温度を測ります。
類型1:学費が高くて庶民には無理、という反応。これは主に医学部の学費に対する印象です。医学部の6年間総額は3,700万円(公式)で、確かに大きな金額です。ただし後述の通り、これは私立医学部の中では突出して高いわけではなく、中位に位置します。さらに埼玉県地域枠をはじめ返還免除つきの奨学金が複数用意されており、家計だけで判定するのは早計です。
類型2:偏差値が低い、底辺だ、という反応。これは保健医療学部の偏差値35帯や、私立医学部の中では入試問題が基礎的だという受験者の声に由来します。前者は当サイトもA:実質全入と判定している通りで、否定はしません。後者については、入試の易しさと卒業時の実力は別物です。実際、国家試験合格率は入試難度が上位の大学と遜色ない水準にあります。
類型3:過去の出来事のイメージ、という反応。過去に入試を巡って報じられた事案の印象が、大学名に対する漠然としたイメージとして残っているケースです。大学側は関与を否定しており、現在の教育や就職の実態とは切り離して評価するのが妥当です。事実確認の取れない個別の記述をここで繰り返すことはしません。
3類型に共通するのは、いずれも入口や過去のイメージに関する話であって、教育の質や出口の実績を否定する根拠にはなっていない、という点です。噂の温度は高くても、実像を否定する重みはありません。参考にした考察記事は、subblog(埼玉医科大学は「やばい」のか)。
就職・進路(大学公式の進路データを主軸に)
この章が、Fランという語感を最も強く裏切る部分です。まず保健医療学部の直近の学科別就職実績(2025年3月卒業生、大学発表)を見ます。
- 看護学科:就職率100%(就職者85名)
- 臨床検査学科:就職率100%(就職者38名)
- 臨床工学科:就職率100%(就職者24名)
- 理学療法学科:就職率100%(就職者35名)
4学科すべてが就職率100%です。これは大学発表の数値としてスタディサプリ進路に掲載されています。加えて、私学版大学ポートレートに基づく集計(旺文社パスナビ)では、保健医療学部の卒業者224名のうち就職希望209名に対し就職204名、就職率は約97.6%と算出されています。母数の取り方で数字は動きますが、いずれも高水準であることは一致しています。
就職先も具体的です。主な就職先は埼玉医科大学国際医療センター57名、埼玉医科大学病院24名、埼玉医科大学総合医療センター13名、丸木記念福祉メディカルセンター3名、そのほかTMGあさか医療センター、板橋中央総合病院などが続きます(パスナビ・進路データ)。グループが県内に3つの大学病院を抱えており、実習先がそのまま就職先になる構造が、この数字を支えています。
資格の出口も堅い。ベスト進学ネットが掲載する令和6年度の新卒国家試験合格状況では、看護師84名中84名、保健師20名中20名、臨床検査技師31名中31名、臨床工学技士26名中25名、理学療法士36名中36名が合格しています。多くの職種で合格率がほぼ100%です。
医学部については、私学版大学ポートレートの卒業者数が直近で118名、125名、136名と推移しており、卒業生は臨床研修へ進むのが通例です。医師国家試験の合格率も、情報サイトのまとめ(subblog)によれば直近で94%台と全国平均を上回る年があり、入試難度が上位の大学と比べても遜色ありません。入口の偏差値だけでは見えない出口の堅さが、公式データではっきり確認できます。
学べること・学部の特色
埼玉医科大学は、医学部と保健医療学部を持つ医療系の総合大学です。学べる中身は資格職に直結しており、いわゆる潰しの効かない学部ではありません。
医学部(医学科)。開学以来のすぐれた臨床家の育成という理念を掲げ、埼玉医科大学病院・総合医療センター・国際医療センターという3つの大学病院群で臨床実習を行える環境が最大の特色です。国際医療センターは高度先進医療を担う病院で、最先端の症例に学生のうちから触れられます。埼玉医科大学は性別適合手術を国内で早期に実施した施設の一つとしても知られ、専門性の高い医療に取り組んできた歴史があります。
保健医療学部(看護・臨床検査・臨床工学・理学療法)。日高キャンパスにあり、隣接する国際医療センターが主要な実習先です。4学科と医学部を合わせた2学部5学科の合同授業があり、チーム医療を早い段階から体験できる点が売りです。看護学科では看護師に加えて保健師の受験資格(選択者)も取得でき、臨床検査学科では第一種衛生管理者や健康食品管理士の受験資格など、周辺資格も狙えます。
教育手法にも工夫があります。情報サイト(yobikore)のまとめによれば、リアルタイムで理解度を把握するクリッカーを使った双方向講義や、講義を収録して繰り返し視聴できる配信システムを導入しているとされます。少人数制で手厚くサポートし、国家試験合格まで伴走する姿勢が、前章の合格率と就職率に結びついています。偏差値の数字からは見えにくい、実学としての厚みがある学部構成です。
入試方式・合格難易度
入りやすさは学部で大きく異なります。同じ大学名でも、医学部と保健医療学部を混同すると難易度を読み違えます。
医学部。一般選抜、大学入学共通テスト利用選抜、学校推薦型選抜(埼玉県地域枠を含む)などが用意されています。偏差値は62.5で、私立医学部という枠の中では入試問題が基礎的だという受験者の声はあるものの、一般的な大学の物差しでは十分に難関です。当サイトの基準でFランに分類されるような入試ではありません。倍率も相応に高く、記念受験で通る水準ではありません。
保健医療学部。一般選抜のほか、総合型選抜、学校推薦型選抜など複数の入試方式があります。偏差値は4学科とも35.0で、当サイトの基準ではA:実質全入。基礎学力を固めて出願すれば合格圏に届きやすい水準です。総合型選抜Ⅰの合格者のうち成績が特に優秀な人には特待生として学費の一部が免除される仕組みもあり、間口の広さと支援の手厚さが同居しています。
整理すると、埼玉医科大学の合格難易度は二層構造です。医学部は難関、保健医療学部は実質全入に近い。検索で「Fラン」という語に反応した人が実際に受けようとしているのがどちらの学部なのかで、必要な準備も難易度も全く変わります。まずは自分が目指す学部を特定することが、遠回りを避ける第一歩です。詳しい入試日程や科目は、大学の募集要項で最新の情報を確認してください。
学費・奨学金
学費は学部で桁が違います。医学部の学費の高さが大学全体のイメージを引き上げていますが、実際に負担する金額は志望学部で確認する必要があります。数値はいずれも大学の受験生サイト(学納金・奨学金・特待生)に基づきます。
医学部。初年度納入金は825万円、6年間の総額は3,700万円です。内訳は入学金200万円、授業料は年275万円、施設設備費や実験実習費などが加わります。金額としては大きいものの、私立医学部の学費としては中位に位置します。奨学金は複数あり、代表的なのが埼玉県地域枠医学生奨学金です。月20万円・総額1,440万円を貸与し、卒業後に貸与期間の1.5倍にあたる9年間、埼玉県内の指定医療機関で医師として勤務すれば返還が免除されます。ほかに、卒業後に本学で勤務することで返還が免除される医学部特別奨学金(総額1,850万円)や研究医枠奨学金なども用意されています。
保健医療学部。初年度納入金は184万6,370円、4年間の総額は約647万円です。内訳は入学金30万円、授業料は年100万円などで、私立の医療系学部として標準的な水準に収まります。第一種特待生(総合型選抜Ⅰ合格者対象)は50万円免除、在学中の第二種特待生は30万円免除といった制度に加え、看護学科等奨学金や埼玉県看護師等育英奨学金、日本学生支援機構の奨学金も利用できます。本学は高等教育の修学支援新制度の認定校でもあります。
学費が高い、という噂は医学部に限れば事実に近い一方、保健医療学部では当てはまりません。奨学金と特待生を組み合わせれば実質負担はさらに下がるため、額面だけで諦める前に制度の確認をおすすめします。
立地・キャンパス
キャンパスは埼玉県内に分かれています。学部によって最寄りも雰囲気も異なるため、通学のイメージは志望学部で考える必要があります。
医学部・埼玉医科大学病院。所在地は埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38。緑の多い閑静な住宅地に立地し、周辺に大きな繁華街はありません。娯楽施設が少ないぶん、6年間を勉学と実習に集中させやすい環境だと言えます。裏を返せば、都心の華やかな学生生活を期待すると物足りなさを感じる立地です。
保健医療学部・国際医療センター。所在地は埼玉県日高市山根1397-1。JR川越線の高麗川駅から路線バスで約10分程度で、スクールバスも運行されています。主要な実習先である国際医療センターが同じキャンパスに隣接しているため、講義から実習への移動負担が小さいのが利点です。都心からは距離があり、通学圏は主に埼玉県内やその近郊になります。
両キャンパスに共通するのは、生活の便利さよりも医療の現場に近いことを優先した立地だという点です。実習先が徒歩圏や隣接地にある環境は、医療職を目指すうえでは大きな価値があります。一方で、通学時間やアクセスは進学先を選ぶうえで無視できない要素なので、オープンキャンパスなどで実際のルートを体感しておくと後悔が少ないはずです。
向く人・合わない人
ここまでの数字を踏まえて、埼玉医科大学が向く人と向かない人を整理します。判定はあくまで当サイトの中立的な見立てで、最終的な相性は本人の目的次第です。
向いている人。第一に、埼玉県内やその近郊で、看護師・臨床検査技師・臨床工学技士・理学療法士といった医療資格を取って堅実に就職したい人。グループ3病院への就職が実質的に見込め、就職率も国家試験合格率も高水準です。第二に、大学名の偏差値ブランドより、実習環境と出口の確実さを重視する人。第三に、医学部志望で、私立医学部の中から現実的な選択肢を探している人。奨学金の選択肢も豊富です。
合わない人。第一に、大学名の偏差値イメージや世間体を最優先する人。保健医療学部の偏差値帯を理由に恥ずかしいと感じてしまうなら、入学後の満足度は上がりにくいでしょう。第二に、都心の立地や華やかなキャンパスライフを求める人。第三に、学費負担を最小化したい医学部志望者。ただし奨学金の活用で緩和できる余地は大きく、地域医療に一定期間従事する前提を受け入れられるかで評価は変わります。
Fランかどうかという一語で相性を決めるより、自分が医療職として何を得たいのかを基準に置くほうが、この大学は正しく評価できます。
まとめ:埼玉医科大学はFランか
結論を整理します。埼玉医科大学は、一つの大学の中に難関と実質全入が同居しています。医学部医学科は偏差値62.5で、当サイトの基準でFランには当たりません。保健医療学部の4学科は偏差値35.0で、A:実質全入(純Fラン帯)に該当します。「埼玉医科 Fラン」という検索が指しているのは、多くの場合この保健医療学部側の偏差値帯です。
ただし、当サイトが軸に据えた収容定員充足率86.6%(私学版大学ポートレート、2025年)が示すのは、入りやすさの一面にすぎません。もう一つの面である出口は堅く、保健医療学部の直近就職率は各学科100%(大学発表)、国家試験合格率も新卒でほぼ100%の職種が並びます。入口偏差値はFラン帯・出口実績は堅実、という非対称がこの大学の正体です。
だから私の中立判定はA:実質全入としつつ、それは大学の価値が低いという意味ではありません。医療資格を取って県内で堅実に就職したい人にとっては、偏差値の数字以上に実用的な選択肢です。噂の温度に流されず、志望学部の偏差値・学費・就職先という三つの数字で判断してください。それが、この大学を正しく評価する唯一の方法です。
よくある質問
埼玉医科大学はFランですか。
学部で分かれます。医学部医学科は河合塾偏差値62.5で、当サイトの基準ではFランに当たりません。保健医療学部の4学科は偏差値35.0で、A:実質全入(純Fラン帯)に該当します。ただし就職率は各学科100%(大学発表)、国家試験合格率も高水準で、入口の偏差値と出口の実績は別物です。
収容定員充足率86.6%とはどういう意味ですか。
定員100に対して在籍が約87、つまり定員を完全には満たし切れていない状態を指します。出典は私学版大学ポートレート(日本私立学校振興・共済事業団、2025年)。偏差値35帯まで門戸を広げても定員が埋まり切らない一方、卒業後の就職は堅いという、この大学の二面性を数字で示す一次データです。
埼玉医科大学の就職は良いのですか。
保健医療学部の2025年3月卒業生は、看護・臨床検査・臨床工学・理学療法の4学科すべてで就職率100%(大学発表、就職者は順に85・38・24・35名)です。主な就職先は埼玉医科大学国際医療センターや埼玉医科大学病院などグループの大学病院で、実習先がそのまま就職先になる構造が背景にあります。
埼玉医科大学の学費はいくらですか。
医学部は初年度825万円、6年間総額3,700万円です(私立医学部では中位)。保健医療学部は初年度184万6,370円、4年間総額約647万円です。いずれも大学の受験生サイトに基づく数値で、埼玉県地域枠医学生奨学金(総額1,440万円・9年勤務で返還免除)や各種特待生制度で実質負担を下げられます。
やばい・恥ずかしいという噂は本当ですか。
噂の多くは、医学部の学費の高さ、保健医療学部の偏差値帯、過去に報じられた出来事のイメージという3類型に整理できます。いずれも入口や過去のイメージに関する話で、就職率100%・国家試験合格率の高さといった出口の実績を否定する根拠にはなっていません。事実確認の取れない個別の書き込みは判断材料にすべきではありません。
参考・出典
- 河合塾 Kei-Net 大学検索システム(埼玉医科大学・偏差値/学費)
- 私学版大学ポートレート 埼玉医科大学 保健医療学部 進路・就職情報(日本私立学校振興・共済事業団)
- 私学版大学ポートレート 埼玉医科大学 医学部 進路・就職情報
- 埼玉医科大学 受験生サイト 学納金・奨学金・特待生(大学公式)
- 埼玉医科大学 保健医療学部紹介(大学公式)
- 旺文社パスナビ 埼玉医科大学 保健医療学部/卒業後の進路
- スタディサプリ進路 埼玉医科大学 保健医療学部(大学発表 就職実績)
- ベスト進学ネット 埼玉医科大学 保健医療学部(令和6年度 国家試験合格状況)
- subblog 埼玉医科大学は「やばい」のか(噂考察・二次)
- yobikore 埼玉医科大学医学部の特徴(特色・二次)