― 大学別データ判定 ―
石川県立大学は本当にFラン?いや、偏差値47.5の実力を数字で論破する
河合塾偏差値・大学公式の就職データ・収容定員充足率という一次データで「やばい」「恥ずかしい」の噂を冷静に検証する

この記事の目次
河合塾偏差値は45.0前後。まず数字の実像から見る
私が受験指導の現場でまず確認するのは、口コミや噂ではなく河合塾が公表しているボーダー偏差値です。石川県立大学は生物資源環境学部の1学部体制で、学科ごとの河合塾偏差値(Kei-Net2027基準)は次の通りです。
| 学部 | 学科 | 河合塾偏差値 |
|---|---|---|
| 生物資源環境学部 | 生産科学科 | 45.0 |
| 生物資源環境学部 | 環境科学科 | 45.0 |
| 生物資源環境学部 | 食品科学科 | 47.5 |
代表値として見れば45.0前後。共通テストのボーダー得点率はおおむね56〜60%です(河合塾提供・みんなの大学情報)。偏差値40を切る学科は一つもなく、食品科学科にいたっては47.5と、いわゆる中堅下位のラインにしっかり乗っています。
私はかつて偏差値40の大学に通っていました。だからこそ断言できますが、偏差値45という数字は決して「全入」ではありません。共通テストで複数教科を課され、二次でも個別学力検査がある公立大学を、偏差値40そこそこの受験生が無対策で突破するのは難しい。数字の時点で、石川県立大学はいわゆるFランの定義から外れています。
そもそも「Fラン」という言葉は、本来は河合塾が合格ライン(ボーダー)を設定できない、つまり事実上の全入(BF、ボーダーフリー)の大学を指す用語でした。石川県立大学には各学科にきちんとボーダー偏差値が付いています。この一点だけでも、Fランという呼び方は定義上あてはまりません。以下では、上位サイトが触れていない一次データも重ねて、実像をさらに立体的にしていきます。
ここが本題。収容定員充足率は113.8%で定員を超えている
偏差値や口コミは各サイトが出していますが、当サイトがもう一枚めくって確認するのが収容定員充足率です。これは「定員に対して実際に何%の学生が在籍しているか」を示す数字で、大学の人気と経営の健全さを同時に映します。世間でFランと呼ばれる大学の多くは、この数字が100%を割り込む定員割れの状態にあり、偏差値低下と定員割れの負のループに入っています。
石川県立大学の学部入学定員は3学科×40名=120名/年。4年分の収容定員は480名です。これに対する在籍者数は546名(2025年5月1日現在・大学公式「学生数」)。つまり充足率は約113.8%で、定員を1割以上も上回っています。学科別に見ても、次のとおり全学科が100%を超えています。
| 学科 | 収容定員(4年) | 在籍者数 | 充足率(試算) |
|---|---|---|---|
| 生産科学科 | 160 | 182 | 約113.8% |
| 環境科学科 | 160 | 177 | 約110.6% |
| 食品科学科 | 160 | 187 | 約116.9% |
| 学部合計 | 480 | 546 | 約113.8% |
表の面(ポジティブ)。定員超過は、定員割れの真逆です。募集に困っておらず、地域に一定の需要があり、経営も健全だという証拠になります。Fランの典型症状である「定員割れ→偏差値低下→さらに人が来ない」という負のスパイラルとは無縁の状態です。公立の単科大学として、農・食・環境の分野で堅実に受験生を集められている、と読めます。
裏の面(冷静な注記)。ただし充足率が高いこと自体が、教育の質の高さを直接保証するわけではありません。在籍546名を4で割ると1学年あたり約136名で、入学定員120名より多い。これは留年からの復帰・休学明け・編入・研究生などを含む実在籍者数のため、「毎年2割増で入学させている」という意味ではない点は正直に押さえておきます。規模そのものは1学年120〜136名程度と小さく、大規模総合大学のような選択肢の広さはありません。数字を持ち上げすぎず、貶めすぎず読むなら、結論は「人気で困っていない、堅い中規模以下の公立大学」です。
なお、充足率の分子となる在籍者数は大学公式および大学ポートレート(国公立版・大学改革支援学位授与機構)、入学定員は大学公表値を用い、充足率は当サイトが両者から算出した独自試算です。私学事業団の私学版大学ポートレートは私立大学のみが対象で、公立である本学には用いていません。判定はあくまで当サイト独自の中立判定である点を明記します。
「やばい・恥ずかしい」と検索される理由を冷静に分解する
データがこれだけ手堅いのに、なぜ「やばい」「恥ずかしい」といったネガティブな言葉で検索されるのか。私は受験指導のなかで、こうした検索語の多くが学力の実態ではなく、印象のズレから生まれるのを何度も見てきました。石川県立大学について流れる噂を、逐語ではなく類型として整理します。
- 類型1・知名度の薄さ。石川県立大学は2005年に石川県農業短期大学を母体として4年制大学へ改組された、比較的新しい単科大学です。全国区の知名度はまだ高くなく、「聞いたことがない大学=Fラン」という短絡的な連想が検索の温床になっています。知らないことと、レベルが低いことは別問題です。
- 類型2・単科で小規模。1学部3学科という構成は、多くの人が「大学」と聞いてイメージする総合大学とは規模が違います。学部数の少なさが「大学っぽくない」という印象につながり、実力とは無関係に軽く見られやすい構造があります。
- 類型3・立地の環境不満。田園に囲まれ、生活には車がほぼ必須という環境への不満が、口コミのなかで「やばい」という言葉に混ざりがちです。これはキャンパスの利便性の話であって、学力や教育の質の評価ではありません。
- 類型4・名称の地味さと混同。「県立大学」という響きが地味に受け取られること、また同じ石川県内の石川県立看護大学など他の公立大学と名前が混同されることも、ぼんやりしたネガティブ検索を誘発します。
いずれの類型も、偏差値・就職・入試といった実態を表す指標ではなく、知名度と規模のギャップが生む印象論にすぎません。噂の出どころを分解すると、「学力が低いから恥ずかしい」ではなく「知られていないから不安」という構図が見えてきます。
就職・進路。就職希望者就職率はほぼ100%(大学公式)
農学・環境・食品といった資格や専門性が問われる分野は、偏差値の数字よりも出口(就職と進学の実績)で評価すべきだと私は考えています。石川県立大学は、まさにこの出口が強い大学です。大学公式および進路データ(2024年度卒)によれば、生物資源環境学部の卒業者134名のうち就職希望者は104名、就職者も104名で、就職希望者ベースの就職率はほぼ100%。さらに進学者が27名おり、卒業生のおよそ2割が大学院などへ進む研究志向の高さも特徴です。
| 区分 | 人数(2024年度卒) |
|---|---|
| 卒業者 | 134名 |
| 就職希望者 | 104名 |
| 就職者 | 104名(就職率ほぼ100%) |
| 進学者 | 27名 |
主な就職先には、地元行政や地域の中核企業が並びます。直近では石川県庁(5名)、東洋設計(4名)、JA全農石川県本部、クスリのアオキホールディングス(各2名)などが挙がっています(パスナビ・大学公式)。過去の年度に目を広げると、農林水産省(北陸農政局)、富山県庁や京都府庁の技術職、金沢市役所、石川県教育委員会(中高理科)、食品・製薬メーカー(健栄製薬、東亜薬品ほか)、建設コンサルタント(国土開発センター、日本海コンサルタント)など、公務員の技術職と専門メーカーへの就職が層として厚いことが読み取れます(マナビジョン)。
ここが石川県立大学の核心です。農業土木や食品衛生、環境の専門知識を武器に、県庁や省庁の技術職という安定した出口に届いている。過去には就職希望者就職率97%(2017年度)といった数字も公表されており、単年のブレではなく継続的に高い水準を保っています。偏差値45という数字だけを見て軽んじると、この出口の強さを見落とします。
学べること。農・環境・食・バイオに特化した単科専門大学
石川県立大学は「農・環境・食・バイオ」をキーワードに、持続可能な社会の創造を掲げる生物資源環境学部の単科大学です。生産科学科・環境科学科・食品科学科の3学科は、それぞれ次のような領域を扱います。
- 生産科学科。動植物や微生物を、集団・個体から細胞・分子・遺伝子のレベルまで解明し、先端技術を活用した育種や生産方法、新たな生物資源の機能開発を研究します。
- 環境科学科。土・水・大気・生物の知識をベースに、農山漁村地域の自然環境の保全と管理、生産や生活の環境整備のための理論と技術を扱います。環境科学科では測量士補の資格取得も可能です。
- 食品科学科。食品の製造・加工・流通技術の開発と、食の機能や安全、健康の維持増進に関する教育研究を行います。発酵や食品機能の分野に強みがあります。
規模が小さいことは、教育面ではむしろ長所に転じます。口コミでも「少人数制で教授との距離が近く、質問しやすい」「実験設備は規模の割に充実していて、他大学なら教員がやる操作を学生自身ができる」といった声が目立ちます。大学院(博士前期・後期課程)や生物資源工学研究所も備え、学部で研究の面白さに触れてそのまま大学院へ進む道筋が整っている点も、進学率の高さと符合します。
入試方式と合格難易度。共通テスト必須で、全入ではない
Fランかどうかを判断するうえで、入試の中身は決定的です。石川県立大学の一般選抜は前期日程と後期日程に分かれ、共通テストを4〜5教科6〜7科目課したうえで、個別試験(前期は1教科)を実施します。加えて学校推薦型選抜(A・B)、総合型選抜、私費外国人留学生特別選抜などが用意されています。共通テストで複数教科の学力を求める時点で、名前を書けば入れるような全入大学とは構造が根本的に違います。
倍率も安定して2倍前後を保っています。2025年度は学部全体で志願636名・合格153名、倍率2.3倍。一般選抜だけなら2.4倍でした。学科・日程別に見ると次のとおりです(パスナビ・2025年度)。
| 学科 | 日程 | 倍率 |
|---|---|---|
| 生産科学科 | 前期/後期 | 2.1倍/1.8倍 |
| 環境科学科 | 前期/後期 | 2.3倍/2.6倍 |
| 食品科学科 | 前期/後期 | 2.7倍/2.7倍 |
後期日程では志願者が募集人数の10倍前後集まる学科もあり、共通テストのボーダー得点率56〜60%を確保できなければ合格は見えてきません。倍率2倍台という数字は、受ければ受かるレベルではなく、きちんと対策した受験生同士が競う健全な入試であることを示しています。
学費・奨学金。4年間で約243万円(県内)の公立コスパ
石川県立大学は公立大学のため、学費の安さが大きな武器です。入学料は石川県内出身者が282,000円、県外出身者が423,000円。授業料は年額535,800円です(大学公式・2025年時点)。これを4年分で概算すると、県内出身者でおよそ243万円、県外出身者でおよそ257万円になります。別途、後援会費(4年間で60,000円)や同窓会費(10,000円)などが必要です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 入学料(県内) | 282,000円 |
| 入学料(県外) | 423,000円 |
| 授業料(年額) | 535,800円 |
| 4年間概算(県内) | 約243万円 |
私立の農学系大学だと4年間で500万円を超えるケースも珍しくないことを考えると、就職希望者就職率ほぼ100%でこの学費は、投資対効果が極めて高いと言えます。「Fランに行く意味があるのか」と悩むような費用対効果ではありません。
経済面の支援も整っています。国の高等教育の修学支援新制度(対象校)に基づく授業料減免があり、日本学生支援機構(JASSO)の給付型・貸与型奨学金と組み合わせられます。多子世帯向けの支援や、経済的理由による授業料減免の枠も用意されており、家庭の状況に応じて負担を下げる道が複数あります。
立地・キャンパス。野々市市の田園と、金沢へのアクセス
キャンパスは石川県野々市市末松1-308。野々市市は各種の住みやすさ調査で上位常連の街で、口コミでも「日本一住みやすいと言われるほど住みやすい」という声が見られます。一方で、大学の周囲は田園が広がり、コンビニや飲食店までの距離があるため、生活には車があると格段に便利、というのが在学生のリアルな評価です。
アクセスは、IR野々市駅からシャトルバス、JR金沢駅兼六園口から北陸鉄道バスで大学構内まで直通の便があります。金沢駅から車でおよそ30分、北陸自動車道の白山ICからおよそ15分という位置で、金沢の市街地とは適度な距離感です。校舎は2005年開学と新しく、口コミでも「校舎がきれい」「一人一つ鍵付きロッカーがある」「トイレや食堂、講義室が清潔」と評価されています。体育館やトレーニング施設の手狭さを挙げる声はあるものの、田園に囲まれた静かな環境で研究に集中したい人には向いた立地です。
この立地への好き嫌いが、先に触れた「やばい」という検索語の一因になっている面は否めません。ただしそれは利便性の好みの問題であって、大学の学力や教育内容とは切り離して考えるべきものです。
石川県立大学が向く人・合わない人
ここまでの一次データを踏まえて、私なりに適性を整理します。
向いている人
- 農業・食品・環境・バイオといった分野に明確な関心がある人
- 少人数制で教員との距離が近い環境で、腰を据えて研究や実験に打ち込みたい人
- 石川県や北陸での就職、県庁や省庁などの公務員技術職を志望する人
- 学費を抑えつつ、大学院進学まで視野に入れたい人
合わない人
- 大規模な総合大学の華やかなキャンパスや、多彩なサークル活動を重視する人
- 全国区の知名度やブランドで進学先を選びたい人
- 車を持てず、田園立地の不便さが生活上どうしても許容できない人
- 文系分野を学びたい人(本学は農学系の理系単科大学です)
専門分野への関心と地域志向がはっきりしている人にとっては、費用対効果と出口の両面で、想像以上に強い選択肢になり得ます。
まとめ。石川県立大学はFランか
当サイトの中立判定は明快です。石川県立大学はFランではありません(明確に非Fラン)。理由を数字で振り返ります。
- 河合塾偏差値は45.0前後(生産45.0・環境45.0・食品47.5)。全入(ボーダーフリー)とは程遠く、各学科にボーダーが引かれている。
- 収容定員充足率は約113.8%で、定員割れどころか1割以上の超過。募集に困っていない、経営の健全な公立大学である。
- 就職希望者就職率はほぼ100%、進学率も約2割。県庁・省庁の技術職や専門メーカーという手堅い出口を持つ。
- 共通テストを複数教科課し、倍率も2倍前後。学費は4年で約243万円(県内)と公立ならではのコスパ。
持ち上げすぎるつもりはありません。全国区の知名度はまだ薄く、規模は小さく、立地は車前提です。難関大学でもありません。しかし、農・食・環境・バイオという専門で、堅い就職と安い学費を両立できる公立の単科大学を、偏差値の一面や「聞いたことがない」という理由だけでFラン扱いするのは、実態に反します。「やばい」という検索語の正体は、学力の低さではなく知名度と規模のギャップが生む印象でした。数字で見れば、答えははっきりしています。
よくある質問
石川県立大学はFランですか?
当サイトの中立判定では、Fランではありません(明確に非Fラン)。河合塾偏差値は45.0前後で各学科にボーダーが引かれており、全入(ボーダーフリー)ではありません。加えて収容定員充足率は約113.8%と定員を超えて学生が集まり、就職希望者就職率もほぼ100%。数字の面でFランの定義には当てはまりません。
石川県立大学の偏差値はどれくらいですか?
河合塾Kei-Net基準で、生産科学科45.0、環境科学科45.0、食品科学科47.5です(2027年度予想)。代表値は45.0前後で、共通テストのボーダー得点率はおおむね56〜60%。中堅下位のラインに位置します。
石川県立大学の就職率と就職先は?
2024年度卒で就職希望者104名に対し就職者104名、就職希望者就職率はほぼ100%です(大学公式)。主な就職先は石川県庁、東洋設計、JA全農石川県本部、クスリのアオキホールディングスなど。過去には農林水産省や各県庁の技術職、食品・製薬メーカーへの実績もあり、公務員技術職と専門就職に強いのが特徴です。
「石川県立大学 やばい」と検索されるのはなぜですか?
学力の実態ではなく、印象論が主因です。2005年開学の比較的新しい単科大学で全国的な知名度が薄いこと、規模が小さいこと、田園立地で車が必要なことなどが「聞いたことがない=やばい」という連想につながっています。偏差値・就職・入試の実態を表す指標ではありません。
石川県立大学の学費はいくらですか?
入学料は県内282,000円・県外423,000円、授業料は年額535,800円です。4年間の概算は県内でおよそ243万円。国の修学支援新制度による授業料減免やJASSO奨学金も利用でき、公立大学としてコストパフォーマンスは高い水準です。
石川県立大学の入試は難しいですか?倍率は?
2025年度の学部全体倍率は2.3倍、一般選抜は2.4倍でした。学科・日程により1.8〜2.7倍で推移しています。共通テストを4〜5教科課したうえで個別試験もあるため、無対策で受かる大学ではありません。ボーダー得点率56〜60%を確保できる学力が必要です。