― 大学別データ判定 ―
叡啓大学は“やばい”のか。Fランと言われる理由をデータで検証
河合塾偏差値・収容定員充足率・就職率98.6%で読み解く、広島県立の新設公立大学の実像【当サイト独自の中立判定】

この記事の目次
叡啓大学の偏差値は「40.0」、ただし額面通りには読めない
まず判定の土台になる偏差値から確認します。河合塾Kei-Net(2027年度入試)で叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部ソーシャルシステムデザイン学科の一般選抜を見ると、方式別ランクのボーダー偏差値は「−(非公表)」、共通テスト得点率は55%、そして複数の入試方式を文理3教科に束ね直した「学部学科ランク偏差値」が40.0と示されています。今回の判定で軸にした代表偏差値40.0は、この学部学科ランクの数値です。
ここで見落としてはいけないのが、河合塾がボーダー偏差値を「−」にしている理由です。叡啓大学の2次選考は一般的な学力試験ではなく、総合問題・面接・英語外部試験(英検やTOEFLなど)を組み合わせた形式です。そのため通常の全統模試の偏差値でボーダーを引けず、非公表になっています。つまり40.0は「学力が偏差値40しかない」という意味ではなく、「通常の偏差値の物差しでは測りにくい大学を、無理に3教科換算した目安」と理解するのが正確です。
スタディサプリ進路(河合塾提供データ)でも偏差値は「−」で、共通テスト得点率は58%と表示されています。一方、ランキング系の解説サイトでは偏差値51.3や53、58といった数値が並びますが、これらの多くは共通テスト得点率を偏差値に換算した推計で、河合塾が実測したボーダー偏差値とは性質が違います。数字が独り歩きしやすいので、出典と指標の種類をそろえて見る必要があります。
| 出典 | 指標 | 数値 |
|---|---|---|
| 河合塾Kei-Net(2027年度) | ボーダー偏差値(方式別ランク) | −(非公表) |
| 河合塾Kei-Net(2027年度) | 学部学科ランク偏差値 | 40.0 |
| 河合塾Kei-Net(2027年度) | 共通テスト得点率 | 55% |
| スタディサプリ進路(河合塾提供) | 共通テスト得点率 | 58% |
| 各種ランキングサイト | 偏差値(換算推計) | 約51〜58 |
私が受験指導の現場で伝えているのは、こうした「偏差値が出ない大学」は数字の大小ではなく入試方式と求める力で読むべきだということです。共通テストで6割弱を求め、さらに英語力と主体性を問う公立大学。この時点で、学力不問で全員が入れる大学とは構造が異なります。
ここが本題。収容定員充足率96%が語る二面性
偏差値だけでは叡啓大学の実像はつかめません。そこで当サイトが独自の軸として重視するのが「収容定員充足率」です。これは入試の難易度ではなく、定員に対して実際に何割の学生が在籍しているかという、経営と人気の体温計のような指標です。全入型のいわゆるFラン大学は、この充足率が慢性的に大きく割れているのが典型です。
国公立版の大学ポートレート(運営:大学改革支援・学位授与機構、2025年5月1日現在)によると、叡啓大学の学部在籍者数は384人です。叡啓大学の入学定員は1学年100人(春入学の総合型50・学校推薦20・一般10と、秋入学の留学生選抜20の合計)なので、4学年分の収容定員は400人。したがって収容定員充足率はおよそ96%(384÷400、当サイト算出)となります。なお叡啓大学は公立大学のため、私学事業団の私学版ポートレートには収録されず、ここでは国公立版ポートレートの数値を用いています。
この96%には、はっきりした二面性があります。
強い面は、国内向けの春入学枠がきちんと埋まっていることです。広島県が公表した令和6年度入学者の状況(環境県民局)によれば、叡啓大学の春入学は定員80人に対して入学者80人で充足率100%。前年度(令和5年度)も入学者78人で97.5%と、ほぼ定員どおりに集まっています。学力不問で全員合格させないと埋まらない大学の姿とは明確に違います。
弱い面は、定員割れの正体が秋入学の留学生20枠に集中していることです。開学3年目にあたる2023年には開学以来初めての定員割れが報じられ、留学生数が目標に届かなかったと伝えられました(中国新聞、Wikipedia)。国際性を看板に掲げる大学が、その国際枠で苦戦しているという構造的な弱点です。
志願倍率も派手ではありません。広島県公式資料では春入学の志願倍率が令和6年度1.8倍、令和5年度1.6倍。旺文社パスナビの2025年度入試結果でも、総合型1.2倍・学校推薦型1.1倍・一般1.7倍、全体で実質1.3倍程度です。倍率は高くありませんが、これは「落ちない」というより「志願者の母数がまだ小さい新設校」の数字と読むのが妥当です。
まとめると、充足率96%は「埋まらないFラン」とは正反対で、定員は基本的に満たされています。ただし留学生枠の弱さと低めの倍率が、外から見たときの不安、つまり「やばい」という検索の火種になっているのです。
「叡啓大学 やばい・恥ずかしい」と検索される理由を類型で検証
ネガティブな検索が起きるとき、その中身を個人攻撃や匿名の中傷そのままで扱うのは不誠実です。ここでは寄せられる不安を4つの類型に整理し、一次データと照らし合わせます。
- 類型1「新設で聞いたことがない」:叡啓大学は2021年4月開学で、卒業生が初めて出たのは2025年3月です。知名度やOBの層がまだ育っていないのは事実。ただし、れっきとした広島県立の公立大学であり、実体のない大学ではありません。
- 類型2「偏差値が出ない=学力が低いのでは」:前章のとおり、偏差値が非公表なのは2次が総合問題・面接・英語外部試験という特殊方式だからです。共通テスト得点率55%前後を課す時点で全入ではありません。
- 類型3「定員割れした=不人気なのでは」:割れているのは主に秋入学の留学生枠で、国内の春入学枠はほぼ充足しています。全体像を見ずに見出しだけを受け取ると誤解します。
- 類型4「英語漬け・留学必須できつそう」:これはカリキュラムの特性です。人を選ぶのは確かですが、それは負荷の高さであって学力の低さの証明ではありません。
一部の集計サイトでは否定的な評価票が目立つこともあります。ただ匿名投票は回答者の母数も属性もわからず、開学直後で在校生・卒業生が少ない新設校は構造的に不利な票が出やすいものです。これは一次データではなく、参考程度にとどめるべき情報です。
結局、「やばい」「恥ずかしい」の中身の多くは、学力崩壊や就職難ではなく「新しさ」と「わかりにくさ」に由来しています。ここを分けて考えることが、判断を誤らない第一歩です。
就職率98.6%。1期生の進路データが評価を一変させる
新設校の評価で最も重いのは、最初の卒業生がどこへ進んだかです。叡啓大学公式サイトの進路・就職データによると、2025年3月に卒業した1期生82人の進路は次のとおりでした。
- 就職希望者70人に対し就職者69人、就職率98.6%(就職希望者ベース)
- 内訳は企業・団体就職65人(94.2%)、公務員4人(5.8%)
- 業種別はサービス業20.3%、情報通信業(IT・マスコミ)15.9%、製造業14.5%、商社13.0%、金融・保険業10.1%
- 勤務先本社の所在地は東京都39.1%、広島県33.3%。首都圏就職が約4割を占める
- 大学院進学は4人(サセックス大学、広島大学、広島市立大学、同志社大学)
- 起業・起業準備3人、家業継承1人
公式に挙がっている主な就職先には、ひろぎんエリアデザイン、スープストックトーキョー、ANAケータリング、カタール航空、日立ソリューションズ西日本、レバレジーズ、サタケ、中電工、中国銀行、三井住友海上火災保険、良品計画、広島電鉄、広島ガスなどが並びます。地方銀行や大手メーカー、IT、航空、公務員、さらに海外就職や海外大学院進学まで、進路が一方向に偏っていないのが特徴です。
学歴フィルターで書類段階から足切りされるのが、いわゆるFランの出口の悩みです。叡啓大学の1期生の進路は、少なくともその像とは一致しません。公立大学という肩書きと、英語・PBLで鍛えた力が、規模の小ささを補っている印象です。
ただし誠実に留保もつけます。これはまだ1期生82人だけのデータで、母数が小さく、再現性は今後数年の卒業生を見て判断する必要があります。1年分の好成績を過大評価するのも、逆に軽視するのも避けるべきで、来年以降の公式データを追う価値があります。
叡啓大学で何を学ぶのか。ソーシャルシステムデザインという設計
叡啓大学はソーシャルシステムデザイン学部ソーシャルシステムデザイン学科のみを置く単科大学です。学部名がなじみにくいのですが、中身は「文理の枠を越えた学びで、社会の課題を解決する仕組みをデザインする」というコンセプトです。
教育の柱は大きく3つあります。1つ目はリベラルアーツで、特定分野に閉じず幅広い教養と思考の型を身につけます。2つ目はPBL(課題解決型学習)で、企業や行政と組んで実在する課題に取り組みます。3つ目は英語で、授業のおよそ半分が英語で行われ、少人数制で議論やプレゼンを重ねます。入学後すぐに少人数グループで任意テーマを議論するJump Start Workshopのようなプログラムも用意されています。
入学時の英語要件は、春入学でCEFR B1相当以上、秋入学でB2相当以上とされています。B1はおおむね英検2級前後の水準で、入口から一定の英語力を求める設計です。全員が留学や実践プログラムを経験することを想定しており、机上の勉強だけで完結する大学ではありません。
裏を返せば、正解のない問いに向き合うのが好きな人、英語を実際に使いたい人、主体的に動ける人には濃い4年になります。逆に、講義を受けて単位を取り、決まった答えを覚えるスタイルを望む人には負荷が高く感じられるはずです。この向き不向きは後半であらためて整理します。
入試は総合型が主役。偏差値より「英語+主体性」で決まる
叡啓大学の入試は、偏差値型の一発勝負ではありません。春入学の募集は総合型選抜50人、学校推薦型選抜20人、一般選抜10人で、総合型が主役です。加えて秋入学の留学生選抜が20人あります。
一般選抜も共通テストに総合問題や面接、英語外部試験を組み合わせる形で、英語力と考える力が問われます。河合塾が共通テスト得点率55%前後をボーダーに置いていることから、共通テストで6割弱の得点は一つの目安になります。
倍率は次のとおりです。旺文社パスナビの2025年度入試結果では、総合型1.2倍、学校推薦型1.1倍、一般1.7倍、全体で実質1.3倍。広島県公式資料では、春入学の志願倍率が令和6年度1.8倍、令和5年度1.6倍でした。数字だけ見れば高くはありませんが、英語要件・書類・面接・課題という複数の関門があり、学力一本の全入とは性質が異なります。
| 入試方式(2025年度) | 募集人員 | 志願者 | 合格者 | 実質倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 総合型選抜 | 50 | 81 | 66 | 1.2 |
| 学校推薦型選抜 | 20 | 22 | 20 | 1.1 |
| 一般選抜 | 10 | 37 | 22 | 1.7 |
| 全選抜合計 | 80 | 140 | 108 | 1.3 |
塾の解説でも、対策を積めば合格可能性は十分に高まるとされています。ただしそれは英語力の準備と、志望動機や課題への向き合い方を言語化する準備が前提です。無策で受かる入試ではありません。
学費は国公立水準。県内なら初年度81.7万円
費用面は叡啓大学のわかりやすい強みです。公立大学のため、大学ポートレートや公式サイトによると学費は他の国公立大学と同等水準に設定されています。
- 入学料:広島県内出身者282,000円/県外出身者394,800円
- 授業料:年額535,800円(前期・後期で半期ずつ納付)
- 初年度納入金:県内817,800円/県外930,600円
初年度に100万円を超えることが珍しくない私立文系と比べると、負担は大きく抑えられます。県内出身なら初年度81.7万円で、英語・留学・PBLを軸にした教育を受けられる計算です。
奨学金も整っています。公式サイトによれば、日本学生支援機構(JASSO)の給付奨学金の選考結果に応じて入学料・授業料の減免が受けられ、入学料の納入は入学後まで猶予される仕組みがあります(入学手続時に入学料の納入は不要)。
ただし注意点として、授業料のほかに体験・実践プログラム参加費や留学費用が別途必要になると公式に明記されています。留学を前提とする大学なので、この追加費用は事前に必ず確認しておくべきです。表向きの学費が安くても、留学費まで含めた総額で家計と相談することをおすすめします。
広島の中心地・紙屋町のビルキャンパス
キャンパスは広島市中区、紙屋町・幟町エリアにあります。アストラムラインの紙屋町東駅がすぐそばで、広島駅からのアクセスも良好な都心型のビルキャンパスです。郊外に広大な敷地を構えるタイプではなく、街のなかで学ぶスタイルです。
都心立地はPBLと相性が良い点です。企業や行政、地域と物理的に近く、実践プログラムやインターン、連携授業に動きやすい環境と言えます。国際学生寮(定員89人)も用意され、生活と学びが近い構造になっています。
一方で、広いキャンパスに緑があり、大規模なサークルや学園祭でにぎわう学生生活を思い描いている人には、物足りなく感じられる可能性があります。学生数も1学年100人規模と小さく、良くも悪くも顔の見えるコミュニティです。この規模感を魅力と取るか窮屈と取るかは、人によって分かれます。
叡啓大学が向く人・合わない人
ここまでの一次データを踏まえ、叡啓大学が向く人と合わない人を整理します。
向いている人
- 英語を「勉強」ではなく「道具」として実際に使いたい人
- 正解のない課題やディスカッションに前向きに取り組める人
- 留学や実践プログラムを前提に、主体的に動きたい人
- 少人数で教員や仲間との距離が近い環境を望む人
- 公立の学費水準でコスパよく学びたい人
- 広島・中四国はもちろん、首都圏就職も視野に入れたい人
合わない可能性が高い人
- 伝統や全国的な知名度、ブランドの安心感を最優先する人
- 受け身で単位を取り、決まった答えを覚える学び方を好む人
- 英語を徹底的に避けたい人
- 大規模サークルや広いキャンパスでの学生生活を重視する人
- 厚いOB・OG人脈や卒業生実績の蓄積を今すぐ求める人
叡啓大学は、万人向けの大学ではありません。しかし刺さる人にはとことん刺さる設計です。合う・合わないをはっきり自覚できる人ほど、入学後の満足度は高くなります。
まとめ。叡啓大学はFランか
当サイト独自の中立判定として、結論を述べます。叡啓大学は、いわゆるFラン(全入・ボーダーフリー)には当てはまりません。共通テスト得点率55%前後を課す広島県立の公立大学であり、収容定員充足率はおよそ96%、1期生の就職率は98.6%(就職希望者ベース)。学力不問で誰でも入れて、出口で足切りされるという典型的なFラン像とは重なりません。
一方で、持ち上げすぎるのも誠実ではありません。河合塾の学部学科ランク偏差値は40.0とグレーゾーンに位置し、志願倍率は1.3〜1.8倍と高くなく、看板であるはずの留学生枠では定員割れも起きています。新設ゆえに知名度やOB人脈はこれから育つ段階で、卒業生データも1期分しかありません。
偏差値40.0という数字だけを取り出してFランとレッテルを貼るのはミスリードです。同時に、MARCHや難関国公立と肩を並べる大学でもありません。叡啓大学の価値は偏差値表の外側、つまり英語で学ぶ環境、PBLの実践、公立のコスパ、そして小規模ゆえの距離の近さにあります。
私(森田涼)は偏差値40の大学を出て、受験指導を8年続けてきました。その経験から言えるのは、こうした「数字で測りにくい新設公立」は、偏差値の40.0ではなく、共通テスト55%・充足率96%・就職98.6%という一次データで見るべきだということです。数字の見出しに流されず、自分の学び方や進路と照らして判断してほしいと思います。
よくある質問
叡啓大学はFランですか?
いいえ。叡啓大学は共通テスト得点率55%前後を課す広島県立の公立大学で、学力不問の全入型(ボーダーフリー)Fランには当てはまりません。河合塾の学部学科ランク偏差値は40.0とグレーゾーンですが、収容定員充足率はおよそ96%、1期生の就職率は98.6%で、典型的なFラン像とは重なりません。ただしMARCHや難関国公立級でもなく、偏差値では測りにくい新設校というのが実像です。
叡啓大学の偏差値はいくつですか?
河合塾Kei-Netでは、2次が総合問題・面接・英語外部試験という方式のため、ボーダー偏差値は「−(非公表)」です。参考指標として学部学科ランク偏差値40.0、共通テスト得点率55%(スタディサプリ進路では58%)が示されています。ランキング系サイトの偏差値51〜58は共テ得点率を換算した推計値で、河合塾の実測ボーダーとは性質が異なります。
なぜ「叡啓大学 やばい」「恥ずかしい」と検索されるのですか?
主な理由は、2021年開学の新設校で知名度がまだ低いこと、偏差値が数字で出ない特殊入試であること、看板の留学生枠を中心に定員割れが報じられたことです。いずれも学力崩壊や就職難を意味するものではなく、中身の多くは「新しさ」と「わかりにくさ」に由来しています。
叡啓大学の就職はどうですか?
叡啓大学公式の進路データによると、1期生(2025年3月卒82人)の就職率は98.6%(就職希望者ベース)です。地方銀行、大手メーカー、IT、航空、公務員、海外就職、海外大学院進学まで進路は幅広く、学歴フィルターで足切りされるFランの出口とは異なります。ただし現時点では1期生のみのデータで、再現性は今後数年の実績を見る必要があります。
叡啓大学の学費は高いですか?
公立大学水準で、私立文系より安く抑えられます。入学料は広島県内出身者282,000円・県外出身者394,800円、授業料は年額535,800円、初年度納入金は県内817,800円・県外930,600円です。JASSO給付奨学金に連動した入学料・授業料の減免もあります。ただし授業料とは別に体験・実践プログラム参加費や留学費用が必要と公式に明記されているため、総額での確認が必要です。
叡啓大学はどんな人に向いていますか?
英語を実際に使いたい人、正解のない課題やディスカッション・留学に前向きな人、少人数で教員との距離が近い環境や公立のコスパを重視する人に向いています。逆に、伝統・知名度のブランドを最優先する人、受け身で単位だけ取りたい人、英語を徹底的に避けたい人、大規模サークルや広いキャンパスの学生生活を求める人には不向きです。